御社は120年近い歴史を誇る古い会社です。やはりかなり早い時期から跡を継がれることは考えていらっしゃいましたか。
私がこの仕事を始めたのは1985年、大学を卒業後、他所の会社で修業することもなく、すぐうちで働くことになりました。もう強制ですよ(笑)。ただ小さい頃から、親やベテランの職人さんの姿を見てきて、高度な技術が要求される職人仕事で、とてもやりがいのある職場だとは思っていました。
実際に始められてみていかがでしたか。
それはもう本当に大変でした。しんどいのは見ていて分かっていたつもりでしたが、それ以上でした(笑)。世はまさにバブルの全盛期で、仕事が多かったですから、朝から晩まで紙積みばかりでね。ただ、うちは大手企業さんの、非常に細かな所までうるさい仕事が多かったのですが、そういう無理難題にきちんと応えられる、非常に技術力の高い会社で、働いている方がみんな、とても自信と誇りを持って働いているな、ということを肌身で感じました。
社長がこちらに住まれるようになったのは12年前だとか。会社の歴史に比べれば日が浅いですが、地域に溶け込むため、様々な活動をされているそうですね。
そうですね。私はこちらに住むようになって、たくさんの素晴らしい方たちと出会い、人生が大きく変わったと思っています。ですから、その恩返しではないですが、何か始めたいのです。今考えているのは、地域の子どもたちに和太鼓を教えることです。私は学生時代から和太鼓をやっていまして、今も三光神社の夏祭りで叩いているのですが、その時子どもたちに指導しているのですが、子どもたちがお祭りの時だけで太鼓との縁が切れてしまうのがいかにも惜しくて、「和太鼓クラブ」とでもいうようなものを立ち上げて、伝統や文化を伝えていきたいと考えている訳です。
歴史ある会社を守っていかれるお立場、これからどのようなお仕事をされていきたいですか。
私は「何事にも挑戦する」という言葉を座右の銘にしています。現在印刷業界は非常に厳しい状況に置かれているのですが、今まで培ってきた職人技を、何とか後の世代にも伝えていきたいです。「あれがやりたい、これがやりたい」ということを考えるのは今の状況では贅沢ですが、そうですね、できれば芸術や文化にかかわる仕事ができればいいなと思っています。