ご主人も脱サラ組とのことですが、この店を開店された経緯を教えてください。
サラリーマン生活は長かったのですが、あるきっかけで退社した後はしばらくブラブラしていました。飲食店をやることは全く考えていませんでした。お酒は好きでしたが、焼鳥がそれほど好きだった訳でもありあませんし(笑)。実はここは以前も「こけこっこ」の店名で焼鳥屋をやっていまして、私はそこでアルバイトをすることになった訳です。その時のご主人が事情で店をやめようか、ということになり、私が譲り受けて新装開店することになった、という経緯です。
ご主人は調理経験もあまり無かったそうですね。ご苦労も多かったのではないでしょうか。
正直に言うと、「ダメだったらさっさと閉めればいい」なんてかなり気楽に始めたんです。ところが思いがけず常連さんがついてくれて、「これは本腰を入れて頑張らないとお客様に申し訳ない」と心を新たにしまして、その後必死で勉強に励みました。一番苦労したのは、売り上げが激減した時期ですね。その時に、常連客のお一人である、落語家の桂文福師匠が「落語会をやったら少しはお客さんが増えるんじゃないか」とおっしゃって、店内に即席の高座を設営して落語会を開いたのが、「こけこっこ寄席」の始まりです。お陰様でびっくりするくらいお客様が来てくださって、それ以来恒例イベントになりました。
ご主人がお店をやられる上で、一番こだわっていらっしゃるのはどんな点ですが。
うちは女性客が大変多くて、その辺も考慮して、焼鳥はすべて1本から注文を受けるようにしています。本当の理由は、勉強のためあちこちの焼鳥屋を食べ歩いた時、焼鳥の注文は2本からという店が多く、中には3本というところもあったのですが、自分がいろいろな種類を食べたくても、2本ずつ出てくれば数種類でお腹がいっぱいになってしまう、それでは面白くないな……というところからスタートしています。ですからどんなに手間が増えようと、注文は1本からOKという姿勢を貫いています。
勉強を重ねられて、今後ますます楽しいお店になりそうですね。これからはどんなことを考えていらっしゃいますか。
ここは場所柄、週末になると家族連れが多くなりますので、子どものお客さんが多いのもうちの特徴の1つです。そこでこれから、子どもさんが喜ぶメニューをもっと考えていきたいと思っています。「お父さんがビールを飲んでいる傍らで息子さんが焼鳥を頬張る」なんて幸せな光景だと思いませんか。そしてその子どもたちが大人になって、お酒を飲める歳になるまで頑張っていきたいと思います。
桂文福師匠から頂いたのれん